病院の規模とその対応

恥ずかしながら
まことに恥ずかしながら
生まれて初めて顎が外れました
あくびをした直後、
一瞬顎が戻ってこなくて冷や汗をかく、
という経験は何度かあったものの、
完全に戻ってこなかったのは初めて


ただ、想像していたより痛みはずっと小さく、
割と冷静に考える余裕があったので、
ひとまず親にメールで状況を説明しながら、
ネットでこんなときの対処法を検索
が、調べ方が下手だったのでしょう、
役に立ちそうなネタが一つも上がってこない
そうしてるうちに親から連絡が…
って電話かよ
ものを喋れないからメール打ったのに、
会話なんざ出来るわけないだろと
頭つk(ry
うん、まぁ、大あくびして顎外した奴に「頭使え」とか言われたくないですよね
さんざんこの状況をバカにされながら、
YESは「あー」
NOは「あーあ」
で必死に会話を成立させて、
言われた通り最初は外科に行ったんです
だいたい、顎外れたときは何科に行けばいいのか分からないから、
ここは従うしかないだろうと


近くだからなりふり構っちゃいられないと、
着の身着のまま飛び出すところでしたが、
さすがに大口開けて半泣きで疾走なんかしたら
変質者のレッテルが貼られかねないので、
ちょっと大き目のマスクでごまかしてみたり


…(鏡で確認中)


多少無理があるが、止むを得まい
病院に着いて、おもむろに小さな紙切れを差し出す
言葉で状況を説明できないので、
あらかじめ「顎が外れた」という旨を書いておいたわけです
ただ、どうやらここでは治療できないようで、
最寄の耳鼻科の場所を教えてもらい、
マスクをし直して二度目の疾走
ここはダメだったけど、
今度は病院に紹介してもらったところだから、
今度こそ治してもらえると信じ、
着いた先にはちっちゃい子がメニーメニー
入り口の造りとか、下駄箱の様子だけでも何かおかしいと思いましたが、
中に入った途端、
幼児を連れたママさんたちに一斉に怪訝な目を向けられるプレイ
ホント生まれてきてごめんなさい


受付でさっきと同じ手法で状況説明
保険証は持ってきたか?とか
それがないと全額自己負担になるとか
はっきり言って今はそれどころじゃないので、
もうどうにでもしてくれ、と目で訴えてみる
いや、口が使えないものでね
ところでこちらの病院、
なかなかに盛況なようで、
子供と保護者が合わせて20数名くらいいたんですが、
看護師さんが必死の形相で訴えてくるオッサンを哀れに思ってくれたようで、
顔パスのごとく診察室へ一直線
ずっと待ってたお子様たちには、本当に申し訳ない
こんな大人になっちゃダメだよ!
ま、何はともあれこれで… と安堵したのも束の間、
道具があれば治せるけど、生憎うちにはそれがない、とのこと
で、ここの先生が、
近所では比較的大きな病院に電話してアポを取ってくれて、
礼を言おうにもひたすら頭を下げることしかできず、
お母様方の厳しい視線に見送られて3件目の病院へ出発
この頃になると、さすがに顎が疲れてきてました
痛くはないけど、筋力的に辛いという
またも自転車移動ですが、
マスクをしているとは言っても、
なまじ通気性のいい道具だから、
大口開けて疾走すると、一瞬で口の中が乾くんですよ
で、渇きを潤すためにつばを飲み込もうとすると、
これがもう激痛
しょうがないから、
マスクの上から左手でふたをして片手運転
おまけに苦悶の表情してるんですから、
周りからはリバース寸前みたいに見えたことでしょう


さて、命からがら辿り着きました、大病院(当地比)
こういうところの何が嫌かって、
受付にやたら時間がかかること
普段なら気にも留めないだろうけど、
今回ばかりは事情が違うわけですよ
しかもわざわざ病院から連絡があったんだから、
この大病院様だって事情は分かってるわけでしょ
まぁ例によってあの紙切れを見せて、
あぁさっき電話があった○○さんですね、みたいな確認を受けて、
また保険証と治療費の件を聞かされて、
ここまではいい
ここまではね
一刻も早く何とかしてもらいたい身だけど、
向こうさんも商売だし、他に待ってる人もいるし、
わがままばかりも言ってられないですけど
この病院に来たのが何年かぶりで、
昔の診察券が使えないから再発行が必要で、
発行料金数百円を徴収するという作業を、
この治療の前に行うことにどれほどの意味があるっていうの?
しかもこの作業にあたって、
受付のお姉さんとの会話は筆談になるわけですよ
ものが言えないですからね
けど、筆談なら楽なのかと問われればそうじゃない
先にも言ったように、
ずっと口を開けた状態で、つばを飲むのも困難だから、
下を向いたりすると口内に溜まったそれが流れ出してしまうんです
そのために、
2件目の病院に到着早々、
トイレに駆け込んでリセットさせてもらったりしたんですよ
これが3件目の病院で、
なんか分からんけど住所氏名電話番号など書かされてるときに、
いよいよ容量一杯になってしまって、
またしても筆談でトイレの場所を聞いて、
再びリセット
慌しく舞い戻って、
極力かがんで顔の角度を水平に保った変な格好で記入開始







大病院の皆さん
間抜けとしか言いようのない私の姿を見て、
あなた方は何を思いましたか?
顎が外れたくらいでなに辛そうな顔してんだコイツと、
軽く蔑視して終わりですか
なるほど、確かにあなた方にとっては赤の他人だ
蔑視するどころか、何の感情も抱かなくて当然といったところか


思いがけないスピードでまたしてもつばが溜まり、
記入中にいよいよこぼれ出したそれが、
マスクに染み込む形で九死に一生を得た事実に気付いていましたか?
そもそも受付のお姉さん、あなたは分かってたはずだ
「こちらにご記入ください」
と言ったその顔は、ものを書くのも辛そうだと感づいているような、
あるいは汚いものでも見るような、
眉間にしわを寄せた表情
あなたを責めてもしょうがないのは分かります
決められたマニュアルに忠実に、
文字通り事務的に仕事をこなしただけなんでしょうから


けど、顎を戻してくれることより、
住所氏名等を書かせる方が緊急性が高かったんですか?

  • 身元の分からない人間の治療なんかできない?
  • アレルギーや過去の大きな病歴が分からないと適切な治療ができない?

前者は免許証一つ出させれば済んだ話でしょう
後者に至っては、治療が終わってから取って付けたようにパパッと聞かれて終わりましたよ








「治してもらった身で何を偉そうに」
そう思うことでしょう
確かにその通り、
その件については感謝しています


でもね
それ以上に大事なことがあるでしょう


今日行った1件目と2件目の病院の方々は、
自分の病院の管轄じゃないからなどと冷たいことを言わず、
親身になって対応してくれました
その心意気に感動したし、
本当に嬉しかった








病院の規模とその対応


規模と親切さがきれいに反比例している現状を、
「しょうがない」の一言で片付けるしかないのだとしたら
とても悲しいことだと思います